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東京地方裁判所 昭和44年(むのイ)941号 決定 1969年5月20日

請求人 山崎素男

決  定

(請求人氏名略)

被疑者小田島一夫、同鈴木正人、同栗原和夫、同高橋馨、同横井健、同徳永庸夫、同村上寛治、同横山秀樹に対する各建造物侵入、威力業務妨害、兇器準備集合、公務執行妨害、被疑事件、被疑者小林喜雄に対する建造物侵入、威力業務妨害、被疑事件、被疑者栗山晴夫に対する建造物侵入、威力業務妨害、兇器準備集合、公務執行妨害、東海道新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法違反被疑事件につき、弁護人山崎素男から準抗告の請求があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

東京地方検察庁検察官が昭和四四年五月一七日請求人に対してなした被疑者らとの接見の日時、場所および時間の指定を拒否する処分を取消す。

東京地方検察庁検察官は請求人と被疑者らとの接見につき、その日時、場所および時間を指定しない限り接見を拒否してはならない。

理由

一、請求人は「昭和四四年五月一七日東京地方検察庁検察官がなした、請求人と被疑者らとの接見を拒否する処分を取消す。東京地方検察庁検察官は被疑者らと請求人との接見を妨害してはならない。」との決定を求め、その理由の要旨は、被疑者らは、建造物侵入等被疑事件につき、昭和四四年四月二八日逮捕され、引続き代用監獄高井戸警察署留置場に勾留されているものであるが、その弁護人となつた請求人は被疑者らと接見するため、同年五月一七日午前一〇時頃右警察署において、電話で東京地方検察庁検察官に対し、直ちに被疑者らとの接見をしたい旨申入れたところ、同検察官は、同日午前一一時四五分頃同署公安係長を通じて請求人に対し、右接見の申入を拒否しかつ接見の日時、場所、時間も指定できない旨告知した。

しかし、検察官が弁護人に対し具体的に日時、場所、時間を指定することなく、加えて取調中でもないのに接見を拒否することは違法な処分であるからその取消を求める、というにある。

二、よつて調査するに、被疑者らはいずれも昭和四四年四月二八日建造物侵入等被疑事件につき逮捕され、同年五月一日付請求の結果、同年同月二日勾留状が発付執行され、以来代用監獄高井戸警察署留置場に在監中であつたが、同月九日右勾留の期間を同月二〇日まで延長されたため、引続き同留置場において勾留されているものであること、その弁護人たる請求人は同月一七日右警察署に赴き右被疑者らと接見しようとしたところ、東京地方検察庁検察官は、同署公安係長を通じて請求人に対し、右接見を拒否すると共に、接見の日時、場所、および時間をも指定しない旨告知したことが認められる。

弁護人が被疑者と接見することは原則として自由であり、ただ検察官等において捜査のため必要あるときに限り、かつ具体的にその日時、場所および時間を指定することによつてのみこれを制限することができるに過ぎないものであるから、かかる具体的な指定を拒否しながら接見も拒否することは、不適法な処分といわなければならない。

してみると、本件検察官の処分は不適法というべきであるので、刑訴法第四三〇条、第四二六条により主文のとおり決定する。

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